地面師に騙されないために【第1回】
- 2019-11-22
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◆地面師はあなたのそばにも
昨年、日本列島を震撼させた「積水ハウス事件」によって、不動産詐欺集団『地面師』の存在が再び脚光を浴びました。
しかし、地面師は戦後の混乱の中で所有者不明の土地を転売するなどのスタイルから始まり、いまもその姿かたちを変えながら生きながらえているのです。
◆書類の偽造技術はすごい
印刷技術や画像加工ソフトなどの高性能化、低価格化によって、書類偽造の技術は非常に進んでいます。
本物の印鑑証明書用紙を入手して、印影、氏名、住所、生年月日などを薬品で消して上から印刷しなおしたようなケースで、それを偽造だと見抜くことはほぼ不可能です。
免許証やパスポートなどの証明書の偽造業者などもネットで検索すればすぐに見つけることが出来る時代です。積水ハウス事件で使用された偽造パスポートは、ブラックライトを照射するテストを通過したと言われています。
もはや、決済の場での書類確認だけで、周到な詐欺を完全に見抜くことはきわめて困難であると言ってよいでしょう。
◆書類だけの確認にしない
すべての案件が対象ではないですが、注意しなければならない案件については、書類だけの確認では危険な場合があります。最も確実な確認方法はやはり、目の前にいる売主の『人間』の背景を確認することです。
では、どうすればよいのでしょうか?
登記事項証明書、公図、建物図面などの公的書類から得られる情報は膨大です。たとえば、下記のような事項を読み取ることができるはずです。
①土地の所有者の変遷(売買?贈与?相続?)
②所有者の住所・氏名の変更内容や変更日
③土地の分筆、建物の新築・増築内容や日付
④銀行からの融資額や融資日、返済日
⑤差し押さえを受けたか?どこから受けたか?
不動産登記に記載された事項は、人生に起きたビックイベントの記録そのものなのです。
このような不動産の全歴史を把握した上で売主と対話することで、なりすましを見抜くことが出来た事例は多くあります。
桜のお花見の世間話から、所有者の住所地と発言内容の矛盾を見抜き、不動産詐欺を防いだ事例があるそうです。
書類がそろってるから大丈夫、という姿勢は地面師の思うつぼだと言えるかもしれません。
(次回へつづく)
